サバイバルー1


●インド洋大津波 生死分けた逃げ道選び スリランカ・ヤラ国立公園
ツアー運転手「岩山へと言えば…」
 【ティッサマハーラーマ(スリランカ南部)=将口泰浩】インド洋の大津波でサファリツアー中の日本人十二人が死亡・行方不明になったヤラ国立公園の現場を取材した。休憩所にいた日本人ツアー客十七人と運転手三人を津波が襲った。逃げ道はジャングルをかき分けた先の岩山と川沿いの道だけだったが、津波は濁流となって川沿いにジャングルを駆け上った。高い所か、逃げやすさか-瞬時の判断が生死を分けた。
 「怖かった。思いだしたくもないし、もう海は見たくない」。渋るツアー運転手、ラージャさん(45)とともに現場に向かった。
 ツアー客が分乗した四輪駆動車三台の運転手のうち一人が行方不明、一人が入院、ラージャさんだけが無事だった。
 公園入り口から四輪駆動車で一時間。その間、ゾウの親子やシカを見た。「こんな海岸近くには来ないのに…。津波で何か変わったのかな」とラージャさん。ジャングルの生態系がおかしくなっている。
 大津波の日、早朝からのツアーを終え、ツアー客が休憩所で食事をしている間、運転手三人は入り口でたばこを吸っていた。ラージャさんは「海を見ていたら、左側の岬の方から、渦を巻きながら、波が来たのが見えた」と証言する。
 「海がおかしい。みんな逃げろ」。シンハラ語で叫んで休憩所を飛び出した。他の運転手二人も駆け出し、ツアー客が後に続いた。
 「サイクロンのときと同じで高い所がいい」
 ラージャさんはジャングルを抜け、岩山を目指した。もう一人は岩山と川の間のジャングルに向かった。だが、一人が橋を渡り、川沿いの道を走っていった。道の周囲には高い木がない。海岸から約三百メートルの岩山から見ると、車が浮き、低くなっている川に沿って津波がジャングルの奥深く流れ込んだ。
 ジャングルに向かった運転手がけがをし、道を走っていた運転手は不明のまま。生存したツアー客はジャングルで木につかまったり、登ったりして助かった。
 「岩山はジャングルが間にあって、走りにくいから、みんな道の方に行った。どうして英語で岩山に逃げろと言わなかったのか。もっと多くの人が助かったかもしれない」。ラージャさんは日本製のかばんを拾い上げて、そうつぶやいた。
 公園事務所によると、日本人八人を含む外国人十四人、スリランカ人三十三人の遺体が発見された。当日は車七十五台に分乗してツアーが行われたが、行方不明者の数さえ把握できていない。(産経新聞)
●タイでゾウが津波を予告?…激しい叫び声上げる
 【バンコク=林田裕章】インドネシア・スマトラ沖地震による津波に襲われたタイ南部のリゾート地カオラックで、津波襲来の前、波がまだ穏やかな時に、海浜の観光用のゾウ8頭が、激しい叫び声を上げていたことが分かった。
 ロイター通信などによると、ゾウが叫び出したのは、スマトラ島沖で地震が発生した直後の12月26日早朝。ゾウの生態を知り尽くしているゾウ使いにとっても、聞いたことのない叫び声だったという。ゾウはいったん泣きやんだが、1時間後、再び叫び声を上げたかと思うと、観光客を乗せたまま、林を抜けて丘へ疾走。ほかのゾウも頑丈な鎖をかみ切って逃げ出したため、多くの観光客もあわてて避難したという。その直後、巨大な津波が襲った。
 津波は1キロほど内陸まで押し寄せたが、ゾウたちが逃げ込んだところまでは届かなかったという。(読売新聞)